妄想は甘くない
ずっとずっと、気遣いを絶やさず、周囲の顔色を伺って来た。
そうやって自分を守って生きてきた筈なのに、何故こんな目に遭うんだろう。
そして何故、他の誰でもなくこの人に弱音を吐いているのかと、疑問が沸いた顔は不安気だったろう。
しかし頭を上げ合わさった瞳は、特に驚きも表さず静かに答えた。
「……間違ってないと思いますよ。皆の働きを見て自分の役割を定めて、周囲を動かす。中々、誰にでも出来ることじゃない。解ってくれてる人も居ると思いますよ」
何もかも飲み込んだ上で告げられた感覚を受けた。
あたかも裸にされたような恥ずかしさと、満たされて行く心が熱い。
初めて素直に自分を晒して、認めて貰った気がした。
受け止められることは、気持ち良いんだ──