妄想は甘くない
毎度のことだから、ひとりで過ごす気満々だったけれど。
……付き合うって、何処へ? 飲みに付き合えってことなら、居酒屋とかかしら。
気になって仕方無い人からのお誘いに、そわそわと急いて来た心を察知したが、そりゃあ飲みに行くなら休みの前日に越したことはないと、自分を宥めた。
この日を指定して来たのは、単に花金だからだろうと、深読みするのは止める。
もしかしてこれっていわゆるデートでは? などと頭に浮かんだ要略も、顔が見えず淡々とした口調から、どういう心境なのかいまいち読めなかった。
突っ込んで考える暇もなく、強引に話は進められて行く。
『じゃ、金曜は定時で上がって下さいね。俺も頑張りますから』
「え、あの……」
『言うこと聞いてくれないと、バラしちゃうよ?』
「……わかった……」
可愛らしい口ぶりだが例によって脅されており、躱すことも出来ずに反論は飲み込んだ。