妄想は甘くない
「最近安くて良いスタイリング剤多いよ。これとか、これとか。しっとりして纏まる」
様々なコスメやボディケア用品の並ぶ店で、彼女の手にした商品はどれも華やかで可愛らしく、それだけでたじろいでしまいそうな気持ちをぐっと抑えた。
近藤おすすめの品を購入しレジから戻って来ると、彼女は瞳を煌めかせにんまりと笑った。
「教えたんだから、王子がどんな反応したか報告してよね☆」
「……あはは……」
この近藤がそうそう物分り良く引き下がってくれるはずはなく、相手が王子様だと確信しているあたり始末が悪い。
いずれ事のいきさつを吐かされてしまいそうだと頬を引き攣らせた。
待ち受ける追求を過らせただけで恐ろしく、深く考えるのは止める。
その夜、翌日の夜と練習をして、どうにか見るに耐える程度には形になった。
「すごーい……天パがここまで……」
右、左と首を捻って鏡の中の自分を眺め、その出来映えに鼻歌でも口ずさみそうだった。
気を良くしたわたしは調子に乗って、未だかつて数える程しか挑戦したことのないお団子以外のヘアアレンジを頭に描く。