妄想は甘くない

大神さんの骨張った指先がブラウスの胸元に掛けられた。
器用にボタンを外し始めた手を、止めるように慌てて触れた。

「あの……っ。シャワー借りて良い……?」
「ん、シャワーとかは、良いや。気にしないから」

いやいや、わたしが気にするんだけどっ!?
今にも頭がパンクしそうなわたしを余所に、平然と手元の動きは再開されてしまう。
襟首のはだけた胸の谷間にキスが落とされて、身体を跳ね上がらせた。
ほとんど無意識に掌を頬に当てていたことを悟ると、益々顔が火照った。

膝丈のスカートから差し込まれた手が、触れるか触れないかの曖昧な動きでストッキングの上を這っている。

「……ねぇ……そんな頑なに脚閉じられてちゃ、出来ないんだけど?」
「だって、恥ずかし過ぎて……」

胸元から頭を上げた上目遣いが心に刺さって、眉を下げてしまった顔は情けなかっただろう。
長い指が、開放を促すように膝の内側を滑る。
太腿から上って来るような迸る劣情に、それだけで放心してしまいそうに赤面した。
もう死んでしまうんじゃないかというくらいに、轟音を立てている心臓が、脳みそにまで響いて目眩を起こしそうだ。

皆本当にこんな恥ずかしいことしてるの……!?

心に浮かべたと同時に、眼前の人が呟く。

< 96 / 134 >

この作品をシェア

pagetop