妄想は甘くない
「茉莉さん……もしかして……初めて?」
「…………」
重たがられるのが嫌で認め難かったが、隠し通せるとも思えず、仕様がなしに小さく頷いた。
「大丈夫。俺に任せて」
特に驚きも表さずに、落ち着き払った整った顔が首筋にキスを落とす。
キスの嵐が止んだかと思うと、覆い被さるようにわたしの頭の横に腕を立てた前の人が、ゆとりのある微笑みを寄せた。
「さて、お姫様」
「……」
「力抜いて」
それでも尚、王子様みたいな穏やかさを湛えている至近距離の顔が余りに眩しく、惚けて見とれた。
この人に、全てを預けてしまいたい。
支配されたい気持ちに陥って来る。
「……思うように……して?」
図らずも口を突いて出た台詞に、見合わせた顔は目を丸くしている。
次第に頬を染めた焦れたような瞳に、じっとりと睨まれた。
「……その台詞はヤバいって。男知らなさ過ぎ。後悔しても、遅いよ」