妄想は甘くない
ブラウスの裾から侵入した指先が素肌を撫で上げ、背筋に電気が走る。
「ぁ……っ」
ストッキングの剥ぎ取られた太腿の間に、差し込まれた彼の脚の体温がスーツの上からでも伝わりそうに感じる程、身体中が痺れていた。
熱に浮かされたかの如く、思うように動かせずYシャツの背中を掴んでしまう。
「大神さ……っ」
「名前で呼んで。茉莉さん」
先程からナチュラルに名前を呼ばれていることを知っていたが、目の前で囁かれ視線が絡まると、改めて頬を紅潮させた。
「……蒼真……くん?」
怖々呟いて、眼前のはだけた胸元から覗く鎖骨に動揺したが、逸らしたくなった顔をどうにか我慢した。
切なそうに細められた瞳には熱が宿ったようで、その指先は遠慮がちに頬を撫でた。
時間が止まったかのようなふたりだけの空間に、身体は震えそうで、目を合わせているのがやっとだった。
「……俺、茉莉さんのこと」
何か言い掛けた彼を察知すると、その唇に人差し指を立て、薄く微笑んで返した。
「……もう、黙って?」
告げたわたしの心を汲もうとしてくれたのか、口を噤んだ唇から言葉の代わりに再びキスが降ってくる。
吐息が耳朶を擽ったかと思うと、その淵を舌が這い、絖らかな感触と水音が身体の芯を刺激する。
身を捩って避けようとするものの、耳の中まで執拗に追い掛けられ、逃れることも出来ない。
「ん~~……っ!」