妄想は甘くない
身体を隅々まで丁寧に解された頃には、息も絶え絶えで放心状態で天井を仰いでいた。
「……こんな乱れた姿、他の男に見せちゃ駄目だよ……」
耳元で囁かれた艶めいた声色に、涙目のままシーツを握った手に力が篭った。
「見せっ……見せたことない……っ」
「……じゃあ、俺だけにして。これからも」
甘美な言葉と共に与えられる感触に、頭がおかしくなるんじゃないかと意識の端に過ぎらせた。
瞬間、微かに耳に届いた溜息と一緒に吐き出されたような切なげな声。
「入れるよ……」
その声に驚き顔を上げたと同時に、彼の長い指の先が太腿の裏を押さえ食い込んだ。
「あっ……!」
融通の利かない脚をばたつかせ、爪先が空を切る。
下腹部から重く迫り上るような衝撃に、頭を仰け反らせ口元は開いたままで動けない。
こんな感覚、妄想の中には出て来なかった。
涙の滲んだ目尻で頭上の人を見上げると、恍惚として色っぽく、引き締まった胸元に息を呑んだ。