軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


 けれどセレアはそんな声も耳に入らないほど、レイヴンの熱い抱擁に戸惑ったいた。


「どうして……?」


 周りに気づかれないよう小声で尋ねると、レイヴンが切なげな眼差しを向けてくる。それを見た瞬間に、胸が締めつけられるような苦しさを感じた。


「お前が泣いているからだ」

「あっ」


(気づいていたの?)


 けれど、ただ抱きしめるだけでレイヴンはそれ以上を語らない。


 泣いているから慰めてくれているだけなのだろうか。そうだとしたら、そんな優しさは辛いだけだとセレアの悲しみは深まるばかりだった。


 
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