軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


 広間ほどではないが、負けず劣らずの大きなシャンデリアが照らすそこは、赤を基調とした壁紙に椅子、金糸で刺繍されたいくつもの円形模様が並んだ絨毯がある。


そのほかの机や棚は彼の趣味なのか、渋くて濃い上品なオーク色で統一されており、ひと言でいうなら書斎のような一室だった。


「セレア」


 ふいに声をかけられて、ビクンッと肩を震わせる。寝台へ視線を向ければ、感情の見えないヴァイオレットの瞳がこちらを見つめていた。


「こちらへ来い」


(もう、逃げられない!)


 瞬間的に、彼にすべて奪われることを悟る。心臓が不安ンでドクドクと脈打ち、気持ちを落ち着かせるために深呼吸をした。


だが表情は自分でもわかるくらいに、強張っている。

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