軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


 泣きそうになりながら、祈るようにレイヴンを見上げる。その瞳は戸惑うように揺れていた。


 そして、セレアにとっては運命のひと言が彼の口から発せられる。


「俺はお前を無理やり奪うつもりはない」


 瞬間、希望が音もなく崩れ落ちていくような絶望感に苛まれた。


(それほど、私に執着心がないってことよね)


 求められていないことが悲しくて、彼にとって自分はあくまで恩人でしかないのだと落胆する。


なのにどうして、あんなふうに触れてきたのか、怒りさえわいた。


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