軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


 まさか自分が、ここまでひとりの女に入れ込むとは思わなかった。


 彼女の存在は甘露のように自分を酔わせ、至福の中へと誘ってくれる。


かと思えば、毒のように脳を麻痺させ、判断を鈍らせる。飽くことなく依存させられるような、そんな感覚に襲われるのだ。


 初めて冷静でいられない自分に出会い、自分が自分じゃなくなる感覚に恐怖を感じるほどど、セレアのことばかりが頭の中を支配していた。


「いっそ、離れた方がいいのか?」


 手が届く距離に置くから、求めてしまうのではないだろうか。最近ではこうして、セレアのことばかり考えているせいか公務に集中できない。


(早めに手を打たなければ……)


 セレアを前にすると、一国の皇帝であることを忘れてしまうのだ。

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