軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「国境付近でパゼル帝国と抗戦している、国境守備軍の援護に向かったのです」
説明してくれているのは、セレアの護衛にとレイヴンが残した兵だ。
(私にひと言もなく、戦に行ってしまうなんて……)
死なない保証など、どこにもない。なのにあの人は心づもりさえさせてくれないのか、と胸が虚しい切なさに晒される。
「レイヴンはすぐに帰ってこられるのでしょうか?」
焦る気持ちに、心臓がバクバクと鳴り呼吸が苦しくなる。彼がいなくなったらと想像するだけで、頭がおかしくなりそうだった。
兵は話すことをためらうように「それは……」と言い淀んだのだが、懸命に見つめた甲斐あってか、あきらめたように首を縦に振ってくれた。