軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


 セレアがそう思うのは、カエトロ―グ島も例外ではなかったからだ。


 神にすべてを委ねることを崇高な生き方だというカエトロ―グ島の悪習によって、民は自由な意思を奪われ、聖女という犠牲を生んだ。


こういった誰も幸せになれない因襲まで、継承する必要はないとセレアは思っている。どこかで、断ち切らなければならないのだ。


「その戦で傷つくのは、民や戦に赴く兵です」

「皇妃様……」


 護衛兵の目にも憂いの色が滲む。
 

 彼にだって、他の兵にだって守りたい恋人や妻子がいるはず。王家の争いに兵や民を巻き込んでいることを両国の主は気づいているのだろうか。


「話し合うことは、できなかったのですか?」


 人が言葉をもったのは互いが理解したいと思ったからこそだというのに、今も成長せずに戦うことでしか物事を解決できないだなんて、愚かだと怒りに震える。


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