軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


 しかし、国は民がいてこそ成り立つ。いつまでも選択を主導者に委ねていては、悲惨な現状は変わらないことをあの神殿でレイヴンに教わった。


「どういうことですか?」


 目を丸くしてセレアをじっと見つめる兵に、ニッコリと笑ってみせる。


「私に考えがあります」


(ただ憂いているだけではだめ。時には抗うことも必要だわ)


 皇帝である彼とは違った方法で戦を終わらせるため、セレアは護衛兵の制止を振り切り、作戦を実行に移すのだった。 


 宮殿を出て三日目の朝。荒野を見渡せる壁のように険しく切り立った岩の崖の上に、セレアはいた。


目前には砂煙を巻き上げて、今も剣を手に争うふたつの軍が見える。目を閉じれば飛び交う怒号の中に衝突する金属音まで聞こえてきた。



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