軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
けれど、今のセレアはレイヴンの妻であり皇妃。象徴としてではなく、この手にある地位でできることを惜しみなくしたいと思う。
(私があの人に救われたように、誰かに手を差し伸べられる人間で在りたい)
愛した人の強く気高い背中に、恥じない自分でいるために。
「この戦を止めて、愛する者と生きる未来を勝ち取りましょう!」
セレアの声に、「皇妃様について行きますぞ!」、「皇妃様万歳!」といった歓声がわき上がる。
その賛辞に感謝の気持ちを込めて頷き、崖から戦場を強く見据える。
「では、始めてください!」
手を前にかざして叫ぶと、麦畑で働く屈強な男たちが大きな木箱をふたりがかりで抱えて、崖の先に並べる。
その中に入っているのは両国に咲く、純白のシラユリという花びらの山。花屋を営む女たちが、平和を祈って集めてくれたものだった。