軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「私が無理を言って、ここに来たのです」

「なんだと? お前はここが戦場だとわかっているのか!」


 彼の責めるような言い方は、セレアを心配しているからだ。それが彼の真剣な瞳から伝わってきたので傷つくことはなく、むしろ愛しさが増す。


「ここにいる私は、両国の民の代表としてここに立っています」

「両国? 我が国の民もそこにいるのか!」


 パゼル国の皇帝が仰天したような声を上げて、セレアの後ろに立つ民たちの顔を見渡す。


「ガンネル陛下。俺たちはどっちの国が勝とうが負けようが、どうでもいいんですよ!」

「もう、争いのたびに夫を戦に出すのも、住処が脅かされるのも嫌なのです」


 民たちが次々に声を発していく。ふたりの皇帝は苦い顔をしており、ひとつひとつの意見を困惑しながらも受け止めているように思えた。


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