軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「ふたつの国が手を取れば、多くの民が新しい道を切り開き、その知識や技術をもって国を豊かにするでしょう。そしてなにより、無駄に命が失われない」
その場にいた人間全員の視線が集まるのを感じる。今は顔を隠すベールも言葉も禁じられていない。
自分の意見を述べることに緊張がないといえば嘘になるが、なるべく堂々と振る舞った。
「どうか、英断なさってください」
(今、私は民の想いを背負っているのよ)
ここで引き下がることはできない、と気を強く持った。
そんなセレアを見たレイヴンは一瞬呆気にとられた顔をして、耐えきれないといった様子でぶっと吹き出す。
「くくっ、お前には心底驚かされる」
(レイヴンが笑った?)
普段、無表情な彼が破顔する姿に、セレアだけでなく兵たちからも「陛下が笑っているぞ」と驚きの声がちらほら上がる。
ひとしきり笑ったあと、彼はガンネル皇帝へと向き直った。