軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「貴殿に提案がある」

「ほう、申せ」


 対するガンネル皇帝もその真意を問うように、真っ向から受けて立つ。


 ふたりの間に一陣の風が駆け抜け、張り詰める空気の中で民や兵と共に成り行きを見守った。


「皇帝とは民の命を守り、生きる土地を豊かにすることだ。民が最善の道を見つけているというのに、俺たちが争っているというのは愚かだと思わないか?」


(レイヴンは民の言葉に耳を傾けられる、慈愛を持つ皇帝なのね)


 長年の戦で簡単には払拭できない遺恨もあるだろう。それでも平和のために最善の選択をしようとする彼の決断に、尊敬の念を抱いたのはセレアだけでなく民や兵も同じだった。


皆のレイヴンを見る眼差しに、尊意が込められているのが見て取れるからだ。


 ガンネルはしばらく目を閉じていたが、考えがまとまったのか口を開いた。

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