軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「煽ってくれるな、止められなくなる」

「なにをですか?」


 きょとんと平気聞き返すセレアに、レイヴンがあからさまにため息をついた。額に手を当てて、「情事に疎いというのは、厄介だな」という呟きが耳に届く。


 もちろん、なんのことか皆目見当もつかないセレアは、目をパチクリさせたまま懊悩している彼を不思議な気持ちで眺めていた。


「色々だ。とにかく、ほかの男の前でそういう発言は禁止する」


(私、なにか禁止されるようなことを言ってしまったのかしら?)


 思い当たる節はないが、旦那様の望むことなのでセレアはとりあえず頷くことにした。


「それから、この争いを止めてくれたことに感謝する」

「あなたの妻として、なにかしたかったから……嬉しいです」


 その一心でここまで行動できたのは、彼への愛があったからである。人は誰かを好きになると、そのたったひとりを守りたいがために無限の力がわいてくるらしい。


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