軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


 でも、彼はわざわざ恩を売りつけるような真似はしない。優しい彼のことだから、助けられる確証がない段階で話すことはしないだろう。


期待に応えられなかったときに、落胆させたくないと考えるはずだから。


(私の気づかないところで、動いてくれていたのね)


 外見からは想像もできない彼の情の深さに、胸がいっぱいになってセレアは顔をほころばせる。


「誰かにきみを託すことなんて、考えもしなかった」

「私がレイヴンの妻になとうと、あなたは大事な幼馴染だわ」


(それだけは、永遠に変わらない)


 彼への親愛を込めて言ったつもりだったのだが、アグニの表情は晴れなかった。

必死に理由を探してみるけれど、わからずに気の利いた言葉さえ出てこない。

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