軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「子供の頃から、ずっときみのことが好きだった」
(私はもう、たったひとりの〝好き〟にしか、心がときめかない)
どんなに大切な幼馴染からの告白でも、心には届かないのだ。そう、最愛の夫であるレイヴンでなければ、この心と体は満たされない。
「セレア」
彼のトパーズの目が乞うように見つめてくるが、脳裏に浮かぶのはあのヴァイオレットの瞳だった。神秘的で意志の強さを宿すあの瞳が、心を惹いてやまない。
「私は……」
言い淀むセレアの手を、アグニが握ってくる。綺麗で触り心地のいい手だった。でも、セレアは剣を握り固くなった、彼の手を恋しいと思ってしまう。
レイヴンを想えば想うほど、ほかの誰かでは駄目なんだと思い知らされた。
この胸にある想いを彼にどう伝えようか。そう考えていると、ザクッと土を踏む音が聞こえてアグニと同時にそちらを振り向く。