軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「私の方こそ、ありがとう」
好意を寄せてくれたこと、幼馴染としてこれからも側にいてくれることに深い感謝を込めてお礼を口にする。
「それじゃあ、旦那も来たようだし俺は仕事に戻るよ」
ひらりと手を上げて、変わらぬ笑顔で背を向けるアグニ。小さくなっていく彼の姿を見送っていると、ほろりと涙が頬を伝った。
(ありがとう、あなたの幸せを願ってる)
シラユリの花びらが風に舞い、涙に濡れた頬にピトリと張りつく。
「泣くほど、あの男が大事か」
レイヴンが花びらを指先で取ってくれたのだが、あろうことか自身の唇に寄せた。目を見張ると、彼は紫の宝石のような瞳を揺らして憂うように見つめてくる。