軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「待ちくたびれたぞ」

「ごめんなさい、準備に手間取ってしまって」


 周りの者に聞かれないよう、小声で敬語を外す。


 レイヴンは部屋まで迎えに行きたかったらしいのだが、貴族や大臣への挨拶回りのためにやむを得ず先に会場入りをしていたのだ。


「社交辞令の嵐を聞かされる身にも、なってほしいくらいだな」

「そのようなことを言わないで? 皆、あなたの力になってくれる方々なのだから」


 疲弊の色を表情に滲ませるレイヴンの胸に、慰労を込めて額を押しつける。


「お前が言うと、なんでも聞かねばと思うな」


 愛しげに目を細めて、はにかむ彼に笑みを返す。


穏やかな空気を纏い、踊る皇帝と皇妃をうっとりとした様子で眺める貴族たちからは「なんだか、レイヴン様の雰囲気が柔らかくなった気がするわよね」、「皇妃様は絶世の美女ですな」という声が飛び交った。



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