軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「あなたの苗字をもらえたとき、私がどれだけ嬉しかったか知ってる?」


 苗字を失うこと。それは神にこの身を捧げるため、永遠の孤独を受け入れること。


 ずっと、心にぽっかりと穴が開いたような寂しさを抱えて生きてきた。


そんなセレアが誰かと添い遂げる証でもある苗字をもらえて、どれだけ心満たされたのかを彼は知っているだろうか。


「私を孤独の中から攫ってくれて、本当に感謝してるの」

「当たり前だ。何度でも世界の果てまでだって、お前を攫ってやる」


(不敵に微笑む、彼の気高いヴァイオレットの瞳が好き。揺るがない意思を主張する唇も、甘く愛を囁く声も、安心感をくれるこの手も……)



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