軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
セレアは差し出された手に、自分の手を重ねる。その瞬間に強く握られ、もう二度と離れなければいいと願った。
「あなたのすべてが愛しい。妻として、これから先も共に歩みたい」
包み隠さず気持ちを伝えると、我慢できないといった様子でレイヴンに手を引かれる。
「きゃあっ」
体が前へよろめき、踏みとどまろうとして足に力を入れる。だが、セレアが履いているのはヒールの高い靴だ。
当然、細い棒ひとつで重心を均等に保つことはできず、地面に片膝をついていたレイヴンの上へと倒れ込んでしまった。
「怪我はないか」
「レイヴンは大丈夫ですか!」
受け止められたセレアに痛みはないが、下敷きになった彼は背や腰を強打したに違いない。
恐る恐る顔だけを上げると、レイヴンは可笑しそうにクツクツと笑っていた。