軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「どういうことだ、セレアはどこにいる!」


 ガタンっと椅子から立ち上がり、焦りをぶつけるようにして机を叩いた。空気を凍らせるほどの剣幕に侍女はビクリと体を震わせる。


 その中でじっとしていられたのは、軍事司令官のべリエスぐらいだ。アグニは息を呑み、レイヴンから視線をそらせずにいる。


「レイヴン様が中庭でセレア様を待っているとお伝えしたのですが、それっきり行方がわからないのです」


(待て、俺がセレアを中庭に呼び出した……だと?)


 思い当たる節がない。それもそうだ。レイヴンはずっと、この執務室で条約の改正をべリエスたちと議論していたのだから。


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