軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「俺はそのような言伝を頼んだ覚えはないが?」
「ですが、私は使用人からお聞きして……」
(まさか、侵入者が使用人としてこの宮殿に入り込んだのか!)
検問や町への兵の配備を増やしたことで、場内の兵は手薄になっていた。セレアをみすみす攫われてしまったのは、自分の不徳の致すところだ。
「べリエス」
きわめて冷静に努めて、指示を出す。
だが内心、腸が煮えくり返りそうなほど怒りに震えていた。だがここで自分が怒鳴り散らしたところで、最愛の妻は返ってこない。
今は落ち着け、と自分に何度も言い聞かせながら、気を静めるように拳を握りしめた。