軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「なんと! あの子は皇帝陛下の元へ嫁いでいたのか!」
「体調が悪く大事をとっていると聞いていましたが、あの神殿にはいなかったのですね」
驚きを隠せない父の隣で、母は納得したように頷く。
(そうか、大神官は彼らにセレアの不在を伏せていたのだな)
知られれば、聖女を奉って築いてきた己の権力が危ぶまれる可能性もある。なんて小癪なやり方だと心底呆れるが、確実性はある。
「彼女をこの国から攫ったのは、この私だ。重ね重ね申し訳ない」
深々と頭を下げると、セレアの母親はレイヴンの肩に手を添えた。
「セレアを攫ってくださって、ありがとうございます」
(まさか、そのことにお礼を言われるとは思わなかったな)
思わず気の抜けた声が出そうになるのを、グッと堪えた。真意を問うようにその瞳をのぞけば、弱々しく微笑まれる。