軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
最愛の妻にそっくりの顔で、切なげに揺れる眼差しをされると胸が締めつけられる。
まるで、セレア自身が傷ついているように見えるからだ。
「私を責めないのか?」
「おかげで、あの子はひとりの女性としての幸せを手に入れることができた。感謝こそすれ、責めることなどありえません」
素朴な疑問を口にすると、母親は目尻にたまった涙を手で拭う。その肩を抱いた父親も「陛下には感謝しています」と泣き笑いを浮かべた。
(侵入者である俺を掟を破ってまで救おうとするセレアの純真さは、この両親から受け継がれものだな)
優しくも美しい彼女の姿を思い出して、必ず救い出さねばと心に決めて立ち上がると、
「あと数時間もすれば礼拝の時間がくるけど、どうする?」、
「なら急いだほうがいい。この後の礼拝で大神官様が民に恩恵を与えるとかなんとかって聞いたぞ!」という民の穏やかでない話題がレイヴンの耳にも届いた。