軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「なんだと言うのだ! あんなに従順に躾けたというのに、なぜ民が動かない!」
「あなたが私の主では、ないからですよ」
群衆の中から聞き覚えのある声が飛んでくると、人混みが綺麗にふたつに分かれる。
(あのお方は!)
そこに現れたのは、淡いベージュの髪と知的なモスグリーンの瞳をした男性。紛れもない、有能なイザナギ帝国の軍事司令官だ。
「べリエス様!」
「ご機嫌麗しゅう皇妃様。ご無事でなによりです」
いつもの笑顔の中に、ほんの少しの安堵が混じっているように見えた。
「ここにいる皆は、陛下の言葉で目が覚めたのですよ大神官様……いや、フェンリル」
続けて人混みをかき分け、前へ出てきたのは幼馴染のアグニだった。その後ろには信じられないことにセレアの両親もいる。