軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「嘘……お父さん、お母さんっ」


 その姿を見るのは八年ぶりだった。鼻の奥がツーンっと痛み、目の縁から涙が染み出る。


記憶に残るはつらつと明るくかった両親の姿は、見る影がない。年老いて背も曲がり、枯れ木のように細く貧弱な姿をしていた。


それほど長い月日が経ったのだと思い知り、その時間を共に刻めなかった悲しみに胸がズキズキと疼く。


「セレア、こんなに美人になって……ううっ」

「あなたを想わない日など、一日もなかったわ」


 目に涙をためている父と母をこの目に映した瞬間、セレアも我慢できずに泣き出してしまった。


(ありがとう、嬉しい)


 なにかを話せる余裕はなく、返事の代わりに笑みを浮かべて何度も頷いた。


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