軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「フェンリル、お前に大神官を名乗る資格はない!」
レイヴンの強いひと言に士気が上がり、民たちが一斉にフェンリルを取り押さえ始めた。
かつて大神官として島を牛耳っていた男は「離せ! やめてくれ~」と情けない声を上げながら島の地下牢へと連れていかれる。
(これで、ようやくこの島の悪習が終わるのね)
どこか感傷深い気持ちでそれを見送っていると、「セレア」と愛しい人の声で名前を呼ばれた。ゆっくりと声の主を見つめれば、力強くも優しさの滲んだ微笑みが返ってくる。
「迎えに来たぞ、セレア」
彼の言葉が、スゥッと胸に染みていく。
(やっぱり、私の帰る場所はこの人の隣にある)
それを裏づけるように彼が目の前にいるだけで、名前を呼んでくれるだけで、孤独と悲しみに苛まれた体が陽だまりの翼に包まれたみたいに温かくなる。