軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「私もずっと抱きしめてほしかった」
彼の首に腕を回して、その首筋に顔を埋めると乾いた心が沁みるように温かく潤う。居心地い陽だまりを見つけた猫のように、彼の体温に目を閉じた。
「お前がいなくなったと知ったとき、怒り狂ってしまいそうになった。それこそ、国ひとつ滅ぼしてしまいそうなほどに」
存在を確かめるように、彼の腕に力が入る。
(でもあなたのことだがら、冷静であろうと努めたはず)
君主というのは、自由に感情を表に出せない。それに、どれだけ苦しんだだろう。セレアは彼の心を労わるように頭を撫でてあげる。
「セレア?」
戸惑いに揺れるヴァイオレットの瞳が向けられた。いつ見ても美しいそれは、どんな絶望を映しても決して曇ることなく前だけを見据えているのだろう。
(だから……)