軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


(私はなにを考えているのかしら。それよりも、どうしてこんな状況に?)


 彼と自分の間に、情事を連想させる甘い雰囲気など微塵もない。あるのは戦場にでもいるような張り詰めた空気だけだ。


 向けられる警戒心の塊のような視線と、息苦しいほどの威圧感。逃げ出したい衝動に駆られながら、恐怖で声を出すこともできなかった。


「……ここはどこだ」


 固い表情で地を這うような重低音に、事務的に尋ねられる。


「こ、ここは……カエトローグ島です」


 震えながら、なんとか答えた。


「神の島だと?」


 無表情の中に、ほんの少しの驚きが垣間見える。


(驚いているということは、侵入してきたわけじゃないのね)


 漂流してきた彼はいったい何者なのか、セレアは興味を惹かれた。なんせ、この島の人間以外に会うのは初めてだったからだ。


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