軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「私はセレアです。あなたのお名を聞いても?」


 静かになるべく穏やかな口調で問いかけると、男は怪訝そうに片眉を上げる。押しが足りなかったのだろうか、どうやって彼に近づこうかと策を練っていると頭上から諦めにも近いため息が降ってきた。


「……レイヴン・ヴォルテールだ」


 ぶっきらぼうにされた自己紹介。彼の顔には〝嫌々ながらだ〟と書いある。それに不思議と怒りはわかない。その不器用さが、かわいらしく思えてしまったからだ。


「凛々しい素敵な名前ですね」

「お前……俺のことを知らないのか?」


 開いた口が塞がらないといった驚愕の表情を浮かべて、レイヴンは見つめてくる。この島の人間ではない彼と出会ったことはないはずなので、知らなのは当然だろうと今度はセレアが困惑する番だった。


 彼は思案顔で「絶対不可侵の地ゆえか?」と謎の言葉を呟く。

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