軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
本来、セレアが彼と出会うこと、言葉を交わすことは許されなかったことだ。ほんの少しでも年頃の女性のように、聖女なんて肩書も関係なしに誰かと気兼ねなく話ができた。
それだけで満足しなければと、そう自分に言い聞かせる。
「では、すぐにでも……準備、をっ」
悲しんでなんていないと、いつも通りに伝えるつもりだった。なのに、行かないでほしい気持ちが止められない。声が震えて耐えきれずに涙になって、こぼれ落ちる。
「ごめんなさい、ちゃんとあなたを送り出さなければならないのに……」
(どうして、涙は止まってくれないの)
しゃくり上げながら、何度も手の甲で目元を拭う。
「ごめ、なさっ」
もう何度目かわからないほど繰り返した謝罪の言葉をまた口にしようとしたとき、強く顎を掴まれて顔を上げさせられた。