軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


だが、セレアひとりでは大柄の男を部屋まで運べない。それに神殿に来たばかりの頃は神官たちの目を盗んで密会していたこともあったため、幼馴染のよしみでアグニを頼ってしまった。


「大神官様に知れたら、きみの身が危ないんだぞ?」

「ええ、わかってるわ」


 この信仰深いカエトローグ島では真っ白な毛並みに赤い目をしたアルビノの獅子を神として崇め、その使いである聖女は決して穢してはならない神聖な存在だと信じられている。


 とはいえ、聖女でありながらセレアの信仰心はそれほど厚くはない。というのも、歴代の聖女は十六歳で家族と引き離されるだけでなく、苗字も奪われ繋がりすら絶たれる。この掟こそ大神官フェンリルが作ったものだった。


 この島でフェンリルは強い発言力を持っており、絶対である。


 先代から聞いた話だが、神殿から逃げようなどという愚かな考えを持たぬよう居場所を奪うために作られた決まりだとか。


< 8 / 281 >

この作品をシェア

pagetop