軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「お前に借りた歴史書を読んだが、この島は疫病や不作、飢饉をたびたび神の怒りのせいにしてきたようだな。そのたびに許しを請うため、アルビノの獅子と聖女を奉った。自分たちが安心したいがために、ひとりの女の人生を犠牲にしたんだ」


 ズキンッと痛みが胸の中を突き抜ける。ひとりの女の人生を犠牲にする。つまり、今までの聖女たちが抱いてきたこの島の在り方への疑心。それをレイヴンはすぐに言い当てた。


「聖女を犠牲に民の長になり、甘い蜜を吸ってきた大神官の顔をもう一度思い出せ。そいつは神に仕えるいうな聖人の顔をしていたか?」


 射貫くようなレイヴンの視線にアグニが数歩後ずさる。獰猛な獅子を前にしたような気迫に、息をするのも忘れるくらいに圧倒された。


「いや、大神官様は……」


 アグニは思うところがあるのか、視線をさ迷わせる。この場を制していたのは、完全にレイヴンの方だった。


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