軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「お前にとってセレアは、大事な幼馴染じゃないのか」
「当たり前だ!」
「ならなぜ、抗わない!」
クールな仮面をかなぐり捨てて、右手を払うように声を張るレイヴン。彼の声にはあきらかない怒りがこもっていた。
(レインは私のために怒ってくれているんだわ)
今まで自分を聖女として崇める者はいても、セレアというひとりの人間のために擁護の声をかけてくれた人はいなかった。それに感動が突き上げてきて、胸がいっぱいになる。
「神に祈っていても、その場限りの不安は薄れるだろうが解決にはならん」
「そ、それはっ」
「か弱い女にその責任を押しつけているだけだ。このままでは、島の人間は破滅するぞ」
レイヴンの見解は的を得ていた。それは犠牲者である聖女だけが描いていた、遅かれ早かれ島が辿るだろう末路そのもの。
この島は祈ることはしても、具体的に対策をとらない。大神官であるフェンリルの命令がなければ、誰ひとりとして現状を変えようとは動かないのだ。