軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「きみは痛いところを突くな」
なんだか泣きそうな顔でアグニは力なく笑った。そして、ゆっくりとこちらを見つめる。その瞳はどこか寂しそうだった。
「行こう。船なら神殿の裏手の砂浜に、いくつも止まってる」
アグニは背を向けて扉へ向かうと、静かに開けた。まずは顔だけ出して、廊下の様子をうかがい、ついて来いというふうに振り返る。
それを合図に、セレアたちは外へ出た。
廊下は「神殿内の部屋をひとつ残らず開けろ」、「聖女様の部屋は女の神官を呼んで確認させるんだ」という神官たちの声で騒がしかった。
禊をしてセレアの部屋を訪れるまでには、時間がかかるだろう。そのうちに神殿を脱出できればと、そんなことを考えていたときだった。
神官たちがセレアたちのいる廊下に曲がってこようとしているのが、ランプに照らされた目の前の壁に映る。