軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「まずいっ」

「お前たちは下がっていろ、俺が相手する」


 動揺するアグニの声とセレアたちを庇うために前に出たレイヴン。そんなふたりの姿を視界の端にとらえながら、ある扉に目を奪われる。


 そこは、獅子神がいる庭園に続く扉。セレアのみが立ち入ることを許された神聖な場所。ここならば、ほかの神官も容易には入り込めない。その考えに至ったセレアは、ふたりの腕を掴んで引いた。


「こちらに」


 声をかけると、レイヴンとアグニは戸惑いつつも頷いて従ってくれた。ふたりに大きくて重さもある扉を人がひとり通れるだけの隙間で開いてもらい、順番に中へ入る。


 庭園に足を踏み入れると、アグニは「ここはっ」と驚きの声を上げた。獅子神の住まう場所に入るのは、神儀官である彼も初めてだからだろう。


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