軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「庭園か、ん? あれは……」
興味深そうに周りを見渡すレイヴンの視線が、ある一点で止まった。白を基調とした大理石の上座に座り、じっとこちらを見据える深紅の双眼。その美しい純白の存在に、アグニもレイヴンも言葉を失ったまま立ち尽くしている。
「獅子神」
セレアの声に獅子神は耳を震わせた。いつものようにドレスの裾を掴み、引きずらないようにして歩み寄る。
「おい、危険だ」
(それが普通の反応よね。彼が危険だなんてありえないのに)
ふっと微笑みながら、引き留めようとしたレイヴンを振り返る。
「大丈夫です。私にとって彼は、誰よりも心許せる存在ですから」
「なんだと?」
目を丸くしてセレアを見送るレイヴンから、視線を獅子神へ戻す。
彼も迎えるように上座から降りてきてくれた。その手で鼻の頭を撫でてやると、気持ちよさそうに目を細める。
この、気を許してくれているような表情がセレアは好きだった。