軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「ありがとう、獅子神」
外へ出たセレアたちを見送るように座っている獅子神に伝える。さよならも、ごめんなさいも、違う気がした。
彼が行けと言ってくれたから、迷わずセレアは旅立てるのだ。
一度も振り返ることなく、船が止まっている場所まで駆ける。
「急げ、人の声が近い」
レイヴンの忠告も虚しく、「いたぞ、侵入者だ!」という神官たちの声とランプの光がこちらに集まってくるのが見えた。
人数にして五人、槍を手にしてセレアたちを囲む。すかさずレイヴンが前に出ると、素手だというのに構えをとった。
神官たちは「この男が剣の持ち主に違いない」、「聖女様とアグニまで……人質にされたのか!」と叫びながら襲い掛かってくる。
「その剣は返してもらおう」
隣にいたはずのレイヴンが勢いよく地を蹴り、神官の腹部に肘で突きを入れる。
よろめいた神官から、柄に黄金の龍が描かれた剣を取り返すと槍を持った神官がその背後から襲い掛かる。