軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「船に急ぐぞ」

「はい、レイヴン」


 こんな緊迫した状況だというのに、セレアの心は落ち着いていた。


それはおそらく、レイヴンが恐いものなどないとでも言うように、冷静に振る舞っているからだろう。


「あ、ちょっと待ってください」


 駆けだそうとする皆を慌てて呼び止める。皆が何事かと振り返るのを見て、セレアは長いドレスの裾を掴むとレイヴンを見つめた。


「この裾を切ってくださいませんか?」

「なに言ってるんだ、聖女が肌を出すのは……」

「私はもう聖女じゃないよ、アグニ」


 止めようとするアグニに、晴れ晴れしい笑みで答える。そう、自由になるために、その役目を捨ててここを発つのだ。


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