軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「私はただのセレアだから」

「お前は存外、気の強い女だな。気に入った」


 レイヴンはニヤリと笑った。褒めるようにセレア髪をひと房掴み、スルリと撫でる。


そのまま腰の剣に向かうと思われた手が、セレアの背と膝の裏に差し込まれた。驚きに目を見張った瞬間、横抱きにされる。


「レイヴン!?」

「だが、その美しい肌を晒すのには賛成しかねる。よって、このままお前を抱えて走ろう」


 セレアの答えなど初めから待っていないかのように、レイヴンは走り出してしまう。


人ひとり抱えているというのに、砂浜という足場の悪さも感じさせない軽快な走りで、船まで向かう。


(こんな非常事態だというのに、ドキドキするわ)


 男性に抱きしめられたのは父以外に、レイヴンが初めてだった。


こうして吐息が前髪にかかるほど近づくと、息苦しいほどに心拍数が上がってしまう。


 力強い腕に抱かれて、動揺が彼に伝わらないようにと祈っていると、ようやく船にたどり着く。

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