軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「死ぬなよ」
表情こそ動かなかったが、タラップをしまうレイヴンの声には、あきらかな沈痛が滲んでいた。
「レイヴンこそ、セレアを守り切らなかったら呪うぞ」
「この身を賭けて守り抜くと誓おう」
ふたりのやりとり聞きながら、ただ泣くことしかできない自分に情けなくなる。
なにがただしいのか、答えをみつけられないまま話は進んでいってしまう。
どうして皆でこの場所から逃げ出すことができないのかと、獅子神やアグニの顔を思い出して、心が嘆いていた。
それでも刻一刻と時間は迫っていて、必死に今ここでできることはなにかと考える。
なにを犠牲にしても、獅子神にしろアグニにしろ、自分を守ろうとしてくれた。レイヴンだって、命懸けでここから連れ出そうと戦ってくれている。
(それなら私は、なにひとつ彼らの想いを踏みにじってはいけない)
答えを見つけたセレアは、意を決したようにアグニに向かって叫んだ。