鬼の生き様

 こうして浪士組は、土方歳三、近藤勇、山南敬助、沖田総司、永倉新八、井上源三郎、藤堂平助、原田左之助。

芹沢鴨、新見錦、平山五郎、平間重助、野口健司。

殿内義雄、家里次郎、粕谷新五郎。

根岸友山、遠藤丈庵(えんどう じょうあん)、清水吾一(しみず ごいち)、鈴木長蔵(すずき ちょうぞう)、神代仁之助(かみしろ じんのすけ)が残った。

もう一人阿比留鋭三郎(あびる えいざぶろう)という男も残ったが、阿比留は上洛中に体調を壊した為、東下は厳しい為に滞京することとなる。
道中先番宿割を行なっていた勇によくしてもらい、試衛館の一同には恩義があった。
残るように促したのも気優しい源三郎の声掛けであった。

「ワシも残る事にしました。
近藤勇という男をしばらく近くで見たくなった」

もう一人、残った者がいた。
芹沢が大篝火の一件を起こした際に、祐天仙之助と同組であった谷右京である。

「谷さん!」

佐々木如水も谷右京を推していた為、勇は谷が残ると聞いて喜んだ。

「いつまでいるかは分かりませんが、しばらくこのジジイも厄介になります」

「こちらこそよろしくお願いします」

谷も仲間に加わり、新徳寺を皆で出て行った。

「実はね近藤さん。
あの祐天仙之助を覚えているかい?」

谷は言った。
無論忘れてはいなかった、あの目立った着流しのゴロツキだ。

「もう一人、大村達夫(おおむら たつお)という浪士も居ただろう」

大村達夫は若い浪士で、目立ちはしなかったが妙に殺気立っている青年だった。

「大村くんはどうやら、仙之助の首を狙っているようだ」

何故、と聞くとどうやら大村達夫の父である桑原来助(くわばららいすけ)を、大村が幼い頃に、祐天仙之助が殺したらしい。
浪士組の参加の動機も、その親の仇を討つ為だというのだ。

「本当に浪士組ってえのは色んな輩の集まりだったんだな」

歳三はそう言った。
 先の話だが、祐天と大村は浪士組が東下した際に結成された新徴組に加わり、同年の十月十五日に祐天仙之助は北千住一丁目にある遊郭『広瀬屋』から出てきた時に、大村達夫によって仇がとられた。
享年四十五歳である。

しかし、父の仇を討ち取った大村は、翌年の十一月に祐天の子分の内田佐太郎が、大村の父である桑原来助を殺したのは自分で、逆に仙之助の仇を討つという名目を立てられ、新徴組立会いのもとに殺害された。

血で血を洗う仇討事件は、それにて、そっと幕を閉じた。

< 163 / 287 >

この作品をシェア

pagetop