鬼の生き様

大坂力士乱闘事件

文久三年(1863年)六月一日。
　なにやら大坂で不逞浪士が乱暴を働いているという知らせを受けた壬生浪士組が、同日夜、浪士捕捉のために早速大坂へ下った。

「ようやく我等も仕事らしい事が出来ますな」

勇は嬉々として言った。
松平容保より壬生浪士組が認められて以来、勇は市中見回りに力を入れていた。
芹沢は、この前大坂から帰京したばかりなのに、と行きたくはなさそうな面立ちを浮かべている。

「筆頭局長の芹沢さんが行かねば、我等の士気はあがりませんぞ」

勇がそう言うと、芹沢は満更ではなさそうな表情を浮かべて「うむ、それもそうだな」と言いようやく重い腰をあげたのだ。

　勇、芹沢を筆頭に大坂には山南、総司、永倉、斉藤、源三郎、平山五郎、野口健二、島田魁の十名で向かう事とした。

　三日の早朝、高沢民部、柴田玄蕃と称する二人の浪士の宿所へ踏み込んだ壬生浪士組は、難なく捕縛に成功し、身柄を大坂東町奉行所へ引き渡した。
腕に覚えのある十人の剣客にかかっては、さすがに浪士たちも観念せざるを得なかっただろう。