鬼の生き様

似た者同士


 島田魁の話によると、御倉井勢武や荒木田左馬之亮、越後三郎、松井竜三郎、この四人の間者は新見錦に頼まれて肥後藩士のヒラクチの彦斎こと河上彦斎を雇い、歳三を狙ったのだと言う。

そして隊内屈指の美男子である楠小十郎も、どうやら関わりをもっているようだ。


「新見さん、話があるんだ」


新見は歳三の顔を見ると、ギョッとした。
(河上彦斎…あの野郎、仕損じたか)
下唇を噛み締めて新見が歳三を見つめた。

「話とはなんだね」

この日も八木邸では芹沢と新見は酒膳を囲みながら二人で呑んでいた。
芹沢は何事だ、という顔をしながら二人を見ている。

「ここで話すような話ではない」

歳三はそう言い、新見に別室に来るように促したが、

「わざわざ出向く必要はなかろう。のう、新見」

芹沢はそう言い、新見を留まらせ、再び酒を飲んだ。
ないがしろにされるのは好きではない。

「御倉や荒木田たちと呑みましたね?」

「あぁ、呑んだ。それがどうした」

「今日、河上彦斎という肥後の浪人に襲われまして……」

「……それがどうした」

「その河上とも新見さんが会っていたのが目撃されています」

新見はそれを聞くと口籠った。
もう歳三には全て把握されており、申し開きのしようがないのだ。

「答える必要などないぞ。
局長のやる事に、下の者がいちいち口出しをすりゃ、隊の規律が乱れるというものだ」

芹沢は大鉄扇をピシャリと閉じると、聞き慣れない名前に、して、御倉と荒木田とやらは何者だ。と芹沢は聞いた。
四人が入隊した時、芹沢は佐々木愛次郎らと見世物小屋へと出向いている時で、面識が無かったのだ。

「記憶にござらんな」

新見はそう言うと、芹沢はふたたび頭にはてなを浮かべた。

「手間を取らせました。
まぁ、他人の空似ということもあります。
今度はぜひ、新見さんに瓜二つな田中伊織さんとも是非お会いしたいものですね」

歳三はそう言い不敵に笑うと、部屋を出ていった。

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