鬼の生き様

芹沢と新見は歳三が立ち去ったのを確認して襖を閉じた。

「御倉や荒木田という男は何者だ?」

先程の声ではなかった。
渦巻くような不信感が沸き起こり、芹沢はドスの効いた低声で新見に訊いた。

「長州の者だ」

新見もまた諦めたかのように小さく呟いた。

「何故、そんな連中が我が壬生浪士組に入隊をしたのだ。
土方の言った通り、間者かもしれん男と何故、呑んでいた」

「近藤、土方を一掃するには、もってこいだと思ってね」

なぬ!っと芹沢は立ち上がり大刀の鞘を払って新見の首元にかざした。

「ことと次第によってはお前を殺すぞ。
近藤や土方は同志ではないか…、河上彦斎という男もお前が雇ったのか」

「あぁ、そうさ」

「何故じゃ!?」

芹沢の額は青筋を張らせ、目じりを吊り上げ、唇をひん曲げていた。
右手は力が入り、その力で刀は震え、切羽がカチャカチャと静かな部屋の中で音を立てた。

「それはな芹沢先生…。
俺が精忠浪士組を売ったからさ」


新見は覚悟を決めたように毅然とした眼差しで芹沢を見つめていた。

切羽の音が先程よりも大きくなる。
新見は突然脳天に衝撃が走った。
ぐらりと視界が回転して、平衡感覚がおかしくなる。

芹沢が力に任せて殴りかかったのである。

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